ホスピタルアート・9
上を向いて歩こう
高橋 雅子
1,2
1Wonder Art Production
2Hospital Art Lab.
1Wonder Art Production
2Hospital Art Lab.
pp.192
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100178
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長期にわたる入院と闘病生活を続ける人に,今一番したいことをたずねたら,意外な答えが返ってきた.「人が喜ぶこと,誰かの役に立つことをしたい!」それは人間を元気にする源の一つであるようだ.重症な人ほど,自分ひとりでは身の回りのことさえ何一つできなくなる.看護師さんや家族など,人にしてもらうばかりで自分が何もできない無力感と,誰にも必要とされない孤独感を感じるのだという.「自分にもまだできることが残されている!人の役に立つ! と思うと力が湧いてくるの」そう言った末期癌のアーティスト,一瀬晴美さんと,済生会栗橋病院内でアートスライドショーを行った.
まずは彼女に教わりながら,患者さんや家族,職員がそれぞれ,自分が美しいと思う世界を万華鏡のようにフィルムの中に閉じ込める制作作業を行った.そうして仕上がったスライド50枚と一瀬さんの作品30枚による,夏の午後のスライドショー.ミュージシャンのチャーリー高橋氏も即興生演奏で不思議なBGMを奏でてくれた.スライドが換わるごとに誰の制作か尋ねると,患児が誇らしげに,女性の患者さんは嬉しそうに,また男性職員が照れながら手を上げた.みんなで創った和やかな時間.途中,次々増える入院患者さんの器具に必要な電気コンセントが足りなくなったり,車いすの出入りスペースが想像以上に必要だったりと,実施して初めて気づく点も多かった.
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