講座
骨X線像の基礎知識(最終回)―特に大腿骨頚部骨折について
大田 仁史
1
1東京医科歯科大学整形外科
pp.82-85,125-128
発行日 1972年4月9日
Published Date 1972/4/9
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1518104205
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大腿骨頚部骨折の予後および治療法の規準には有名なPauwelsの骨折線の分類があります.治療法のだいたいの選択はだいたいこの規準によって行なってよいようですが,老人の場合はこれと同時に患者の年齢,栄養状態その他全身的抵抗力を考慮して看護せねばなりません.
大腿骨頚部には骨膜性仮骨形成がないため,骨折部の癒合に長期間を要するので,その間老人をベットに安静臥床させると精神障害や沈下性肺炎,尿失禁などの重篤な合併症をきたし,わずかの期間に死に到ることもまれではありません.したがってできるかぎり絶対安静の期間を短縮する必要があります.そのためには,もし転位があればすみやかに索引整復しスミスピーターソンの三翼釘や,キルシュナー鋼線などにより内固定を行なって,ギブス固定をせずベット上での坐位を早期からとらせるという方法をとる場合もあります.また骨折線の斜位をPauwelsの規準に照し合わせながらも,手術に耐えうる者には人工骨頭置換術を行なうことのほうが骨折癒合を待つより有利であることもあります.
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