目でみる耳鼻咽喉科
食道内圧異常に基因した薬剤性食道潰瘍
大垣 治幸
1
,
越井 健司
1
,
宇野 浩平
1
,
平林 秀樹
1
,
秋山 欣治
1
,
日野原 正
1
,
平林 かおる
2
1獨協医科大学気管食道科学教室
2獨協医科大学第2病理学教室
pp.84-85
発行日 1987年2月20日
Published Date 1987/2/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492210255
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薬剤性食道潰瘍は近年報告例を増しており,報告されない例を考慮するとかなりの数にのぼると思われる。どのような薬剤も起因薬となりうるが,tetracycline系抗生剤(とくにdoxycycline),カリウム剤,抗コリン剤によるものの報告例が多い。薬剤性食道潰瘍の臨床的特徴は,服用のさい水なしあるいは少量の水で服用しすぐに就寝した時に多い。また食道狭窄,心肥大による食道圧迫,食道機能異常などがあるときに発症しやすい。薬物服用後早期に症状が出現し,主訴は胸骨後部痛,嚥下困難が多く,中部食道に好発する。内視鏡所見としては大小不同,不整形の白苔を伴った浅い潰瘍が多発するのを認めることが多い。治療によく反応し,治癒のさい変形や狭窄を伴うことは稀とされている。
本症例は食道機能異常が示唆されていた28歳男性が,感冒時clindamycinの投与を受け,薬剤性食道潰瘍を起こした例である。
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