特集 耳鼻咽喉科と感染症
IV.感染症の諸問題
日和見感染症—非病原真菌,特にアルテルナリアを中心にして
古内 一郎
1
,
木谷 孔保
1
,
佐藤 克広
1
,
王 主栄
1
,
馬場 広太郎
1
Ichiro Furuuchi
1
1獨協医科大学医学部耳鼻咽喉科
pp.825-830
発行日 1980年10月20日
Published Date 1980/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492209155
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I.はじめに
アルテルナリア(以下Alter.と記す)は自然界に広く分布し,植物に対しては病原性を発揮するが,人類に対しては非病原性とされている。ところが,空中真菌相air borne moldのなかでAlter.が屋外において上位の飛散分布を示すことや1),健康皮膚の真菌学的検索でもAlter.が検出されることから2),人類とのかかわり合いが臨床医の課題になってきた。そしてAlter.は吸入性抗原として気道を感作し,鼻アレルギー3)や気管支喘息4)過敏性肺炎5)などを惹起することが徐々に解明され,また,その病態は即時型(I型)やアルサス型(III型)を示すことも注目されている。かかるアレルギー疾患の発現は,Alter.が非病原性であることや空中真菌の分布状況から当然予測できたことである。
他方,Alter.が皮膚感染症を惹起するという報告も1930年代にBorsock6)や高槻7)によってなされたが,その後30年間ほとんどこれに関する報告がなく,その発症にすら疑問がもたれていた。ところが,1966年にBotticher8)が幼児の2症例を報告して以来,1970年代になって皮膚感染症のみならず角膜感染症9,10)などの報告が相つぎ,医真菌学的に注目をあびるようになった。さらに,その発症機序に関して種々の考察がなされるようになり,本症が日和見感染症opportunistic fungusinfectionの1つであることが明らかになるとともに,いくつかの綜説11)をみるに至った。
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