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I.はじめに
近年,交通外傷やスポーツ外傷の増加に伴つて顔面骨折の症例は漸次増加の傾向をたどりつつあり,モントリオールにおけるGerrieら1)の統計では人口10,000人につき顔面骨折は5.86(1962年)に達するといわれている。その内でももつとも多く見られるのは鼻骨骨折であり,耳鼻咽喉科の日常の臨床において比較的しばしば経験するところで,前川2)の米国アラバマ大学における経験では顔面骨折76例中,鼻骨骨折は45%に及んでいる。
この鼻骨骨折の診断に当つては,その病歴や視診,触診によつて容易に診断される場合が多いが軟部組織の腫脹の高度のものや,骨折,変位の程度によつてはその診断がきわめて困難な場合も少なくない。また一方,鼻骨骨折を始めとする顔面骨折はできるだけ早期に適確な診断を下して,適切な治療を行なわないと,治療が困難となり,変形や機能障害の回復が不可能となることもある。
このような理由から,鼻骨骨折の診断を明確にするために,レ線検査が必要とされる。ことに,整復手術を適確に行なうためには,術前検査としてのレ線検査によつて骨折の部位,変位の状態を正確に把握することが重要な条件となるし,整復手術後にレ線検査を行なうことによつて適正な位置に整復せしめ得たかどうかの指標となし得る。さらに最近は,外傷による鼻骨々折の有無および変形の程度の適確な診断と正確な記録は,しばしば訴訟の資料として必要とされる場合が多く,この点でも永久保存の可能なレ線写真は鼻骨骨折の有無にかかわらず有用である。
しかしながら,鼻骨はそれの占める位置,他の頭部諸骨との関係および鼻骨自身の厚さなどから,これをレ線写真上に鮮明に影像せしめるには多くの不利な条件が存在し,このため従来種々の撮影方法が工夫されている。にもかかわらず,日常簡便に行ない得る明確な鼻骨レ線検査法は未だ明らかにされていない現況である。
私どもは,この目的にかなうような鼻骨レ線検査法を求めて,各種撮影法を比較検討した。
Because of the rising necessity of making x-ray confirmation in the diagnosis of nasal fractures mainly due to increasing traffic accidents, the authors adopted 4 different methods of making film projections in order to meet this rigid demand. They are namely: (1) Transoral projection (a midway between Waters and axial projection),
(2) Occlusal film (superior and inferior projection),
(3) Lateral projection by soft rays,
(4) Waters' projection.
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