音声顫音症（Tremor of the voice）の1例

TREMULOUS SPEECH

I．はじめに

　器質的病変がなくして音声障害をきたしているものを機能性音声障害といつている。このうちには，大きく分けると音声衰弱症，麻痺性音声障害，痙攣性音声障害が含まれているが，著者は最近，これらの疾患の中に入れることができないと思われる，語声時における音声の顫音を示す症例を経験した。この症例は，発声および会話時に無意識に，しかも，自制することができない顫音を示すものであつて，既報告例を見出すことができない。ここに症例を紹介し，考按を加えたい。

A case of vocal tremor found in a man, aged 63, is reported. The patient was found to be bothered by some family trouble and the cause of this affection was considered to be as some psychogenic manifestation.