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I.緒言
吾々耳科臨床医の外来には日々多くの母親に連れられて難聴児や聾児が訪れて来る。そして種々の精密検査の結果,最早医学的に治療が望み得ない高度難聴,或は聾児である事が判明したとすると吾々はその母親に「聾学校に入れて教育するより他に方法はありますまい」としか答え得ないのが現状である。これ等の難聴児達はその後,数年の間,何等の正式な数育を受ける事なく,学令期に達し聾学校に入学し始めて言語教育を開始されるのである。然しながら学令期に達する以前の数年間と言うものが正常児にとつても,聾聴児にとつても言語を覚える点に於て,人格を形成する点に於て,又充分な人生を送る為の土台を礎くと言う点に於て最も重要な期間である事は多くの学者が早くから力説している。にもかかわらず此の重要な期間に難聴と言う大きなハンディキャップを持つ子供達の大多数に何等の正式な教育が行われていないと言う事は聾教育の立場のみならず吾々耳科臨床医の立場から見ても極めて重要な問題と考えられる。
而るに最近Newhart, HやBeehe, H. H. は之の問題に対して一つの大きな示唆を与えている。即ちNewhart, H. はミネソタの聾学校生徒の純音聴力を測定して非常に多くの生徒に残存聴力がある事を知り,之を早期に発見して補聴器を用いて特殊な教育をすれば正常児と共に普通学校に入る事が出来ると報告している。
Takaki emphasizes the importance of hearing training in early childhood especially the ones who are found to be difficult in hearing. By such a method the auther succeeded in regaining the hearing in 3 children, using individual's residual hearing as basis of this training, whereby, they were enabled to proceed to school along with other normal children, for otherwise they would have been forced to attend the special school intended for the hard of hearing persons.
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