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急激に発来した片側感音系難聴の観察
渡辺 勈
1
,
近藤 宏
1
,
堀江 滋
1
,
古本 京二
1
,
李 同海
1
1東京医科大学耳鼻咽喉科学教室
pp.777-783
発行日 1959年10月20日
Published Date 1959/10/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1492202326
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I.はじめに
一般に内耳性難聴は慢性進行性に経過するものが多く,突発的にあらわれることは比較的少いとされている。然しながら従来殆んど異常を認めなかつた耳に,突然高度の内耳性難聴が発来し,しかも屡々耳鳴,眩暈等を伴うことは患者にとつてまことに劇的な事件であつて,それが何のために起つてきたか,果して聴力は回復するだろうかという切実な訴えがわれわれ耳科医に向つて発せられ,その回答に窮することが多い。
従来この種の突発性の内耳性或いは感音系難聴の原因として,頭部外傷,音響外傷,急性伝染病(流行性耳下腺炎,チフス,麻疹,猩紅熱等)薬物中毒,急性及び慢性中耳炎の内耳への波及,迷路梅毒,脳膜炎,脳腫瘍等があげられているが,臨床的にこれらの何れとも直接の関係が認められないことが屡々ある。この様な原因不明の突発性難聴に特に注意が向けられたのは近年のことであり,その報告も数が少いため(第1表参照),未だ不明の点が多い。特にその治療成績や,難聴の予後,経過等に関してはまとまつた研究が殆んどみられないので,われわれは最近東京医科大学耳鼻咽喉科で経験した26例の突発性,片側性,感音系難聴の診療成績にもとづいて,これらの点を検討した。
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