皮膚結核の化学療法（その6）—Sodium glucronate isonicotinyl hydrazone療法による成績

CHEMOTHERAPY IN CUTANEOUS TUBERCUROSIS (REPORT VI): On Therapeutic Effect of Sodium Glucuronate Isonicotinyl Hydrazone

緒言

　1952年にフランスのPassedouet等かGlucur-enolactoneとINAHから合成したGlucuronolactone isonicotinyl hydrazone（INHG）は，G. Brouet，大藤，北本等の実験的，臨床的研究によると，INAHと同様の抗結核作用を有し，極めて毒性が少いとされる。本邦に於いてはGlucuronicacidとINAHを結合させたSodium glucuro-nate isonicotinyl hydrazone（INHG・Na）が作られたが，このものは1分子中INAHを約36.9％含有し，五味，大藤，徳久等の実験によると，試験管内結核菌発育阻止濃度は0.2-0.3γ/cc，マウスに対する毒性はINAH，IHMSに比して遙かに少くLD₅₀は経口投与で5000mg/kg，，静注で5720mg/kg，皮下注では9800mg/kg又はそれ以上で，INAHの1/25〜1/70，IHMSの1/5〜1/10とされて居り，諸家の報告でも結核に対する長期化学療法剤としての優秀性が認められている。

　我々も之を臨床的に使用する機会を得たので，皮膚結核の2，3の病型に本療法を行つて，その効果を観察し，併せて先に我々が行つたINAHによる治療効果と比較検討して見た。