特集 皮膚泌尿器科領域の腫瘍
睾丸腫瘍
岡 直友
1
1名古屋市立大学泌尿器科
pp.978-986
発行日 1956年12月1日
Published Date 1956/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201833
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睾丸は,皮表に突出した部位にあるだけに,その異常は患者自らこれに気付き,医師も容易に触知し得て,睾丸腫瘍の発見・診断は容易なる如くであるが,他方においては自覚症状を欠くこと,また恥部なるが故に医師を訪れることをしぶり,又医師側に於ても,触診を診断の唯一の手段とするがために,陰嚢内腫脹性の他の諸疾患と誤認され,時を経て,治療の時宜を失することも少くない。睾丸の悪性腫瘍(然もこれが睾丸腫瘍の大部分である)が初期,睾丸の病変が著しくないうちにも既に転移を来し易く,根治療法の機会を失い易いからである。Campbellが,睾丸腫瘍の初発症状が現われてから平均3ヵ月以内に医師を訪れるものでも,その確診が下されるまでに88%は明かな転移を来し時機既に遅いものであることを述べている如くであつて,本腫を早期に発見・確診することは須要である。
一般に睾丸腫瘍は無痛性である。陰嚢内の無痛性腫瘍はすべて睾丸腫瘍の鑑別診断の対象となる。綿密な触診によつて,異常部位が睾丸なるか然らざるかを充分に鑑別することが必要である。
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