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サントニン固定疹について
野村 一
1
,
村田 衞
1
1青森県立中央病院皮膚科
pp.533-536
発行日 1956年8月1日
Published Date 1956/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201741
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I.まえがき
元来人糞を肥料とする我が国の疏菜裁培に於て,必然的に蛔虫寄生の心配は絶えない。一言にして云えば,所謂蛔虫禍である。是れは戦前に於てもあったが,一般から騒がれる程度ではなかった。しかるに敗戦後は蛔虫寄生の患者が急激に増加した為,恰も蛔虫亡国の如くいはれる現状である。該駆虫薬として特効的効果のあるものは,サントニンであることは既に周知の通りで,古くから医家は申すに及ばず広く一般に愛用せられる所以である。ところが,こゝに述べようとする1症例は,やはり蛔虫駆除の目的を以てサントニンを内服後,駆幹,四肢に掻痒性発疹が出現した。その後1年余を経過してから,サントニンを服用したところ,同様の発疹が再び同一箇所に生じたのである。是等の皮膚炎症は治療によって治癒したにも拘らず,該部には黒褐色の色素沈著班を発生したサントニン固定疹の稀有な1例である。
種々な薬剤による所謂薬疹ば数限りない程多数あるから,日常屡々診療の機会もあるが,サントニン疹は初めて遭遇したもので頗る貴重な症例であるから,御参考になる点も多々あることゝ思う。
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