皮膚科図譜・48・49
細菌疹或は自家感作性濕疹/扁牛紅色苔癬
姉小路 公久
1
1東大皮膚科
pp.187-188
発行日 1955年4月1日
Published Date 1955/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201393
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30歳,女。10年来両下腿に掻痒ある湿潤せる病巣研あり,夏増悪し冬軽快する。昭和29年5月初旬,下腿の病巣が湿潤拡大し,間もなく一齋に頭部,顔面,頸部,躯幹及び四肢に発疹した。現症。両眼瞼は発赤腫脹し,頭部,顔面に丘疹,膿疱が散在し,あるものは痂皮,血痂を被る。躯幹及び四肢にも粟粒大の漿液性丘疹叉は膿疱が播種状に存在し,2,3個又は10数個が集簇して居る個所もある。右下腿径骨稜,左下腿腓腸部に夫々略々手掌大の湿潤,糜爛面があり,周囲には丘疹,膿疱が散在し,掻痒が強い。
以上は蓋し下腿の病変が原発巣となり,ここに増殖した化膿菌又は其の代謝産物に依つて予め血行性に感作された全身の皮膚が,白癬疹又は結核疹と同じ意味で"id"性発疹を以て,新に増悪した原発巣からの抗原に反応して,小発疹所謂細菌疹Mikrobideを生じたものと解釈出来よう。若し抗原として原発巣に於ける組織蛋白分解産物を考えるならば,この小発疹は自家感作性湿疹Autosensitized eczemである。播種性小発疹の組織学的所見として,表皮に海綿状熊,小水疱,小膿疱の形成あり,真皮上層に血管周囲性小円形細胞浸潤を見る。
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