看護學講座
濕疹
高橋 吉定
1
1東京大學醫學部
pp.55-58
発行日 1949年7月15日
Published Date 1949/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906499
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わたくしは大學病院の皮膚科に勤めているものですから,殆ど毎日そこで皮膚病患者にたくさん接しています。そして皮膚科の醫者でありながらいつも驚いているのは,一口に皮膚病といつてもその種類が大變に多いことです。どの位病名の數が使われているかと思つて,先日病歴を繰つて調べてみましたところ,稀な疾患をのぞいても百數十種あつたのでした。そこでこれ程たくさんの皮膚病のうちでどんな疾患が多いか知ろうと思い統計をとつてみました。そうすると濕疹が最も多く,しかも他の疾患をはるかに引き離し,濕疹患者はすべての皮膚病患者の約30%を占めていることがわかりました。ずいぶんたくさんの皮膚病患者が診療を受けに來ますが,その凡そ3分の1が濕疹であることを考えると,これにかゝる入がどんなに多いか,したがつてこれがどんなに重要な皮膚病であるかがよくわかります。
濕疹という文字は濕つている皮膚變化という意味ですが,なるほど一面に赤くなつた皮膚がたゞれて,そこから液がしみ出している場合も少くありません.しかしそれは重い症状で,輕い場合には一面に赤くなつた部分に,更に赤い小さな點や小さな水疱がたくさん群つていたり,またこまかな鱗屑(ふけのようなもの)がついていたりします。このようにいつもきまつた症状をあらわさず,たえずいろいろに症状の變ることが濕疹の一つの特徴とされています。いま例を擧げて説明してみましよう。
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