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脂漏性角化症に就いて
野波 英一郎
1
1東京逓信病院皮膚科
pp.55-58
発行日 1955年2月1日
Published Date 1955/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491201357
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Neuman1)(1869)は皮膚の老人性現象としての疣贅形成に注目し,これを老人性疣贅verrucasenilisとした。同じものはその脂漏性外観の故にBarthelemy2)(1881)よつて脂漏性疣贅verruca seborrhoicaと呼ばれ,Handford3)(1888)はこれを黒色脂漏stearrhoea nigricansとした。更にCrocker4)の色素性角化症Keratosis pigmentosa,Pollitzer5)の脂漏性疣贅seborrhoischeWarze,Unna6)の脂漏性母斑Naevi seborrhoici,Suttonの脂漏性角化症seborrheic keratosis等はすべて同一物と解してよいだろう。このものは最初のNeumannの命名もさること乍ら,必ずしも老人にのみ来らず,後に述べるように脂漏性角化症と呼ぶのが最も適当のように思われる。最近著者は老人に生ぜる本症の典型的な1例と,中年即ち37,43歳頃に発した2例とを観察したのでこれを報告し,2,3の考察を加えたい。
脂漏性角化症の皮疹は境界明瞭,帽針頭乃至小指爪甲大,扁平に僅かに皮面上に隆起した腫瘍で,円形,楕円形或いは不正形を呈し,輪廓に微細な凹凸あり,淡黄褐乃至黒褐色,弾力性硬,表面粗糙で,時に汚穢黄褐色の鱗屑が附着し,掻破により容易に剥離出来る。このものの発生の最初には毛孔に一致した小黒点をなす。
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