目でみる耳鼻咽喉科
脂漏性角化症
岡田 真由美
1
,
新井 寧子
1
,
古内 一郎
1
,
岡田 孝一
2
1獨協医科大学耳鼻咽喉科学教室
2獨協医科大学皮膚科学教室
pp.986-987
発行日 1988年11月20日
Published Date 1988/11/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411200252
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脂漏性角化症(scborrheic keratosis;SK)は良性の上皮性腫瘍で,老人性疣贅ともいう。60歳代の男性の86%,女性の71%に認められるほど高齢者に多い病態である。しかし臨床病態が多様で,図1の症例のように耳介に発生し,かつ図2の症例のごとく大きく腫大する例もあり,耳鼻咽喉科医として診断が困難な場合がある。一般的にSKの人きさは半米粒大から豌豆大まで,色調はメラニンの量を反映して正常皮膚色から黒褐色まで,表面は平滑または顆粒状で毛孔性角栓を認め,周囲との境界は明瞭でかつ隆起している.好発部位は顔面,胸背部で,耳介や外耳道に発生するSKは比較的少ない(図3)。図4〜6にSKの典型例と,SKの鑑別疾患(表1)のうち臨床像の近い基底細胞種および悪性黒色腫の症例を供覧する。SKの組織像は臨床病態と対応して多様でありさまざまな分類がなされているが,基本的には皮膚上方への異塑性のない腫瘍細胞の増殖である(図7,8)。治療としてはSKは放置しておいて支障ないが,悪性腫瘍との鑑別が困難な時や美容上問題がある時は切除する。またSKが数か月中に急速に多発し掻痒感を伴う時は,内臓の悪性腫瘍の合併(Leser-Trélat syndrome)を疑い全身の精査をする必要がある。
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