--------------------
臀部に生じた異型皮膚結核の2例
宮林 徹
1
1東京大學醫學部皮膚科教室
pp.129-131
発行日 1953年3月1日
Published Date 1953/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200922
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
今日皮膚結核症の臨床的分類は既に確立され,今後これに多くの改變が加えられるとは思われない,唯結核疹に屬するものに就てはBazin氏硬結性紅斑と結節性結核性靜脈炎の異同の如き多少の議論があり,又皮下類肉腫の如き必ずしも結核性と限らないとされて居る。一方所謂眞正皮膚結核に屬するものは尋常性狼瘡以下その臨床上獨立性には夫々鞏固なものがあり.相互の異同が問題となることは先ずないと云つてよい。然るに組織學的,細菌學的に確かに結核性であつて,その皮膚病變の性状にはこれを既定の皮膚結核症のいずれにも屬せしめ難いものがあり,單に結核性皮膚病變或は結核性皮膚潰瘍と稱するより他ないものが時に存在する。茲に報告する2例は正にかかるものである。
第1例.32歳,男子。幼少來健康であつたが,約10年前より小豆大の痔核があり,時に分泌を増し苦しんで來た。今から7年前の昭和20年華中で捕虜となり,不潔にして居た所,肛門周圍から右臀部へかけて紅色を呈して腫脹,やがて潰瘍面を生じ,分泌液で周圍まで濕濡するようになつた。21年歸還復員後潰瘍面は正中線を越えて左臀部へ進んだが,放置していても著しく増惡することはなかつた。昭和26年1月,右臀部潰瘍の近くに負傷,その後潰瘍が急に増大するようになり,6月硼酸軟膏貼付,ペニシリン300萬單位の注射を受けたが無效,仍つて温泉に2ヵ月入湯したところ,潰瘍面は却つて擴大した。
Copyright © 1953, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.