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重金屬の藥理學
熊谷 洋
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1東京大學醫學部藥理學教室
pp.360-363
発行日 1949年9月1日
Published Date 1949/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200235
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重金屬は藥理學的にも化學的にも明確な一群を形成する。生體に對して不可缺なものもあると共に,生體に對して有害にのみ作用するものとがある。哺乳獸造血機能に關してFe. Cuの不可缺性は周知の通りであるが,更にZn等の生理學的意義は殊に發育或はインスリン作用と關連して漸次せん明されつゝある。他方近代工業技術の進歩によつて,職業的金屬中毒が醫學的並に社會的問題となつて來た。殊に職業的金屬中毒に於ては,既知諸疾患の疾状經過を變貌するという厄介な問題をも起し,鉛中毒が虫垂炎と誤診されて開腹されたり,カドミウム中毒が急性肺炎としてペニシリン治療を強制されたりする悲劇さえ起る。
驅梅劑並に殺菌,利尿劑として既に古い歴史をもつ水銀を例にとつて見ても解る通り,重金屬は治療藥の歴史に於て確固たる地位を占めて來ているのであるが,その作用機序の詳細については尚不明の點甚だ多く,その意味に於ては尚藥理學のジャングルをなしている。
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