特集 気管支拡張症—温故知新 注目され始めた一大カテゴリー
序文
気管支拡張症—温故知新 注目され始めた一大カテゴリー
長谷川 直樹
1
1慶應義塾大学医学部感染症学
pp.172-173
発行日 2024年5月1日
Published Date 2024/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1437200724
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気管支拡張症(BE)は,何らかの原因により惹起された慢性持続的な気道炎症の結果,気道上皮細胞の線毛機能障害によるクリアランス機能の低下と,気道壁の支持組織の破壊により気道内径の拡張を呈する形態学的異常を基軸とする疾患である.特発性から様々な基礎疾患に伴うものまで,その背景は様々である.わが国では稀少だが,欧米ではクロライドイオンチャンネルの遺伝子異常により全身の外分泌異常を呈する囊胞性線維症が気管支拡張症を併発するために注目されてきた.
一方,近年では,囊胞性線維症と関連しない気管支拡張症(NCFBE)が世界的に注目され,閉塞性肺疾患,気管支喘息,間質性肺炎,肺がん,肺循環疾患などに比肩される呼吸器系の疾患カテゴリーとなり,次第にBEは非囊胞性線維症の気管支拡張症を示すようになりつつある.欧米では大規模な患者レジストリーが構築され,基礎・臨床の両面から精力的に研究が進み,欧州ではガイドラインも策定され,米国でも準備が進められている.気管支拡張症は,囊胞性線維症やびまん性汎細気管支炎などからも人種により病態が異なることが示唆され,ホスト側因子の関与が想定される.
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