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本号の扉には,河島雅到教授から英語を用いた医学教育に関する興味深い寄稿をいただきました.2023年から,米国のECFMGの受験資格は,国際基準による医学教育分野別評価の認証を受けた医学部,医科大学の卒業生に限定されることになりました.国際基準で認証を受けていない大学の卒業生は,ECFMGへの申請ができないということで大きな問題になり,日本医学教育評価機構(JACME)が発足して,国際基準に対応した医学教育認証制度の確立に向けた議論が進んでいます.一方,医学・医療の発展は凄まじく,大学の教育現場ではすべてを教えきれないことを背景に,学生時代に「学び方を学ぶ=能動学習」を身につける必要があります.医学教育は,医学部入学から始まり,卒前,卒後の教育のシームレス化の実現に向けて,卒前教育の質の保証が求められています.そして,脳神経外科医の「卒後教育」という視点では,専攻医教育と専門医教育(生涯教育)のシームレス化という問題に行き着くことになるでしょう.
一方,医療という観点では,医療の質の保証と医療体制の変革が世界的に注目されています.日本脳神経外科学会の専門医制度は,最も歴史のある専門医制度の1つであり,近年,脳神経外科専門医を「外科医の眼と技を持った神経系総合医」と位置づけ,Japan Neurosurgical Database(JND)を開始しました.本年の4月から,専攻医が将来の専門医受験申請に使用できる経験症例は,手術症例,非手術症例ともにJNDに登録した症例のみとなりました(最新情報は学会のホームページをご参照ください).JNDは,日本の脳神経外科の「教育と医療」をシームレスに可視化する,先進的な学会事業であると言えます.また,日本脳卒中学会でも,脳卒中センターの整備事業や登録事業の整備が開始されています.将来的には,専門医数などの構造指標に基づいた,研修教育施設や脳卒中センターの認証が行われる見込みです.また,手前みそで恐縮ですが,脳卒中医療の向上に関しては,米国のGet With The Guidelines-Strokeの日本版である,Close The Gap-StrokeをAMED事業で開始しています.国際基準でのプロセス指標を用いた医療の質を評価する活動が日本で開始されることになりますが,いずれも,「ヒト,モノ,カネ」が必要であり,基本診療科として脳神経外科がより広い関連学会をまとめて,社会に向けて継続的な医療の質の向上のリーダーシップをとっていく必要があると思う毎日です.
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