扉
「脳死」のメモ
竹内 一夫
1
1杏林大学・脳神経外科
pp.895-896
発行日 1983年9月10日
Published Date 1983/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436201717
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最近,しきりにテレビや新聞で脳死関係のニュースが報ぜられている.多くの脳神経外科医にとっては余り興味がないかもしれないが,一般にはかなり注意を惹いているようである.とくに臓器移植関係の人々にとっては,今のところ脳死の問題が最大の課題となっている.この際,脳死研究の昔話をしてみるのも無駄ではないと考えた.
1950-55年(昭和25-30年)頃は脳外科病棟で脳ヘルニアによる呼吸停止が起これば,受持医は直ちに患者にまたがって人工呼吸を行ったものである.当時はいまだステロイドもマニトールもなく,わずかに脳室穿刺による髄液排除か,50%ブドウ糖液の静注程度の治療法しかなく,蘇生はおろか短時間で血圧も降下し,心停止・死亡してしまったものである.ときには一晩に3人の患者に人工呼吸をしたり,数時間の人工呼吸で医者のほうがヘトヘトになってしまうこともあった.
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