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編集後記
片山 容一
pp.594
発行日 2010年6月10日
Published Date 2010/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101195
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この号にも,読みごたえのある多数の原稿をいただいた.ご執筆くださった先生方に深く御礼を申し上げる.中瀬裕之教授が扉に書かれているように,米国の医療は恐るべき状況になっているらしい.数十年前には想像もできなかった.わが国でも,医療の最後の砦・大学病院が陥落寸前である.
思い返してみると,数十年前の医療は,かなり素朴なものだった.それから,医療は急速に高度なものに進歩した.高度医療の対象になる疾患が増え,そこに投入される資材も人材も多様化してきた.その結果,国民医療費は,国民がみんなで負担することのできる限度を超えてしまったようである.ところが,国民の健康への希求には際限がない.医療が進歩すればするほど,それにつれて高度医療への欲求も増大する.だから,とうとう帳尻が合わなくなった.これが医療問題の本質だろう.みんなの負担を抑えようとすれば,医療を供給する側が悲鳴を上げる.もうお手上げだからと各々の負担に任せれば,裕福な人々に医療資源が吸い上げられ,医療を受給する側の大多数は我慢するしかなくなる.これでは,もはや解決する方法はないように見える.
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