書評
『プロメテウス解剖学アトラス頭部/神経解剖』―坂井 建雄,河田 光博●監訳
小林 靖
1
1防衛医大・解剖学
pp.181
発行日 2010年2月10日
Published Date 2010/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101114
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『プロメテウス解剖学アトラス』第3巻の日本語版がついに刊行された.第1巻を初めて目にしたときの驚きが,第2巻,第3巻と手に取って開くたびに新たによみがえる思いがする.
『プロメテウス解剖学アトラス』の極めて強い第1印象がその肉眼解剖の精細な図版によるものであることは,多くの評者の指摘しているところである.コンピュータを駆使して作成されたと聞くが,決してこれまでに多くみられたような,単純化された模式的なものではない.実物を詳しく観察した者誰もが納得する,緻密なテクスチャを再現した図は,従来の図譜になかったリアルさを感じさせる.リアルであるという点は写真のほうが有利だと思われがちであるが,焦点深度に限界のある写真と異なり,本書の図はすべてにピントが合っており,描かれている構造のすみずみまで行きわたった細密な描写に圧倒される.それにもかかわらず,正確な陰影の描き方によって,絵の図譜にありがちな平面的な表現とも無縁である.この奥行きの表現は,構造の立体的な理解を容易にする.これは解剖学のみならず臨床各科においても,実地に本書を利用する読者にとって大きな利点であろう.
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