扉
新型インフルエンザに思う
甲村 英二
1
Eiji KOHMURA
1
1神戸大学脳神経外科
pp.207-208
発行日 2010年3月10日
Published Date 2010/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436101121
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脳神経外科誌の扉への原稿依頼をいただいていたが筆が進まないまま,2009年も年末を控えて何かと忙しい時期となった.本年は,流行語大賞となった政権交代をはじめとして話題に事欠かなかったが,医療関連では新型インフルエンザをめぐる話題が最近も世の中を賑わせている.春先の海外での流行からゴールデンウィーク前後のいわゆる水際阻止作戦,その後の国内第一感染者発生などの頃は,国中が大騒ぎでパニック寸前といった感があった.重装備をした医療スタッフによる空港での機内検疫の映像は,国民の不安感をより一層にあおるものであった.海外メディアは奇異な国日本として映像を流していたように思う.国内発生は関西地区で先行していたので,私の居住地近辺では通勤者はほとんどがマスクをし,薬局・売店からはマスクが消え,電車の中で咳でもしようものなら冷ややかな視線を浴びせられた.小中高校は一斉に休校し,大学でも休校措置がとられた.感染者は感染病室に隔離され,感染ルート探しは犯人探しのような様相で,感染の疑いが晴れた学校関係者が涙ながらにインタビューに答えていた.修学旅行が軒並みキャンセルされ,学会の開催も中止,大学からは海外出張禁止令が出た.今からすれば,必要以上で滑稽とさえ言える社会の対応,過剰なまでのマスコミの報道であったように思われる.専門家とされる人々は評論家的な立場でさまざまなコメントをしていたようにも思う.世界からみればわが国での対応はまったく異様なものに映ったであろうと推測する.これも日本のオリジナリティであろうか.
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