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編集後記
河瀬 斌
pp.118
発行日 2009年1月10日
Published Date 2009/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100883
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「独立の気概なき者は人に頼る.人に頼れり者は人にへつらう」とは当時の官僚体制を嫌った福澤諭吉の言葉である.
150年を経た今,しかし何が変わったであろうか.過剰な受験戦争は人間が独立して思考しようとする大切な中学・高校時代を奪い,米国型の自由のみを主張して社会的責任を放棄した無気力な国民を増産している.医療の世界では「医は仁術」と教えながら官僚が過度な医療統制経済を押しつけ,嫌が応でも「医は算術」を体験させている.産科医が不足して社会問題になっているが,その解決方法として医学生を増産することが実行されつつある.しかしどうして勤務医の低賃金・過剰労働と医療訴訟への恐怖がその根底にあることに目が向けられないのか.リスクの多い疾患と戦っている外科系の医師たちがどうして報われないのか.机上に座し,現実を見ずして統制を行っている官僚機構と医師の上げ足ばかりを追っているマスコミにその遠因があることに気づいた時はすでに手遅れなのである.ある分野の医師を育てるには20年要するからである.
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