読者からの手紙
「ヘルメットの紐による縊頸が原因と思われる外傷性頸部内頸動脈解離の1例」の論文について
村上 成之
1
1東京慈恵会医科大学附属柏病院脳神経外科
pp.428-429
発行日 2006年4月1日
Published Date 2006/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1436100208
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貴誌(No Shinkei Geka 32:1279-1282)に掲載されました土居 温先生らの症例報告を大変興味深く拝見いたしました.ヘルメットの顎紐によって頸動脈損傷を来たしうるという危険性を改めて認識させられた次第です.現行のJIS規格(T8133:2000)1)においては顎紐の強度やヘルメットの保持能力(ヘルメットの脱げにくさ)を規定する項目はありますが,筆者らが指摘するように頸部への影響についてはほとんど考慮されていません.本症例のような事故が一定の頻度で発生するのであれば,それはヘルメット規格の再検討を要する問題と言えます.しかし,ここでヘルメット規格そのものを云々する以前に,この症例の患者がヘルメットを正しく着用していたのかどうかを検討しておく必要がありますから,今回「読者からの手紙」に投稿した次第です.
日本交通科学協議会ヘルメット研究委員会の平成14年度の報告書2)に,ヘルメットの着用実態に関する調査結果が掲載されております.それをみますと,例えば工事用や装飾用ヘルメットなどの道路交通法で定められた乗車用ヘルメット以外のものを着用している事例,また合法なヘルメットであっても着用の方法に問題がある事例が決して少ないものではないことが窺われます.特に原動機付自転車においてはヘルメットの前後を逆にしてかぶったり(逆さかぶり),浅く後方にずらしてかぶったり(あみだかぶり)する不適切な使用が運転者の25.8%にも及ぶことが指摘されています.このような不完全な着用方法で事故に遭遇した際には顎紐が容易に頸部を圧迫してしまう危険が生じることになります.
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