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I.はじめに
いままでの脳研究は精神神経科学,脳神経外科,神経生理学の領域で行なわれてきたが,人間を研究する前二者では,感覚を使って研究する手段がとられていなかったし,後者では言葉を持たない動物実験から得られた知見を扱っていた。医学の領域では耳鼻咽喉科学が末梢の耳,鼻,喉頭の治療,研究などに当たっていたが,担当する役割のうちに聴覚,嗅覚,味覚,音声言語,平衡感覚が含まれ脳機能と密接な関係を持つという特徴を持っている。感覚の研究が進んで,感覚を通して脳機能を研究する立場がとられると,いままでの研究手段では見ることのできなかった世界が見られるようになる。
著者は電鍵打叩によるDAF(遅延聴覚フィードバック)効果を利用した大脳半球優位性テストを開発し,これを多数の日本人,非日本人に応用してきた。その結果,両者の間に注目すべき差のあることが明らかとなった。日本人は単純な「あー」の持続母音を10〜75msecに分割して,母音という自覚が得られない短音にしても,子音を含む音節と同様に言語半球が優位となる。しかし大部分の非日本人では,子音を含んだ音節や,これに似た音は言語半球が優位であるが,持続母音だけでは非言語半球が優位となった。日本人が母音を言語半球優位に処理するのは,音韻の自覚とは無関係に,母音に特徴的な二つ以上のホルマント構造に依存することが確認された。
Abstract
Modified key-tapping method was explained precisely, by which the orientation of the cerebral dominance for CV and CVC syllables and melody of music are examined. Using the above-mentioned technique, the author reports following findings.
Part I
Comparative studies between Japanese and Western people on the auditory cerebral laterali-zation for verbal, human emotional, musical and natural-environmental sounds have been performed by the present author since 1972.
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