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はじめに
振戦tremorとは“身体のある部分が律動的rhythmicに反復する不随意運動”と一応定義される。振戦の記述は,部位,頻度(周波数),振幅,規則性の程度に,①安静時at rest,②姿勢(維持)時in posture,③運動時in movementの区別を行なうのが通例である16)が,要は具体的に表現することである。ビデオ,筋電図,mechanogramなどの併用が推奨される。軟口蓋ミオクローヌスpalatal myoclonusは,その部位の特殊性からか,歴史的に振戦と呼ばれていないが28),上記の定義によれば振戦に含まれよう。臨床的には,①安静時にも出現するParkinson病の振戦と,②姿勢時に認められる本態性振戦essential tremorが典型的な両極を形成していると思われるが,その他にいわゆる小脳性振戦をはじめとする種々の型があり,それらの位置づけないし明快な分類は困難な状況にある。企図振戦intention tremorという語は,②と③にまたがる曖昧な内容をもつ16,21)。hyperkinesie volitionelleは,その中に振戦型と呼ばれるものがあり,企図振戦の程度の強いものである21)。
振戦の発現機構の分析は,その症候学から臨床神経生理学,神経病理学,定位脳手術,臨床神経薬理学へと続く臨床研究の流れと,動物それもサルを用いた実験的振戦の作製研究とが相携えて発展してきた。近年,より基礎的な関連分野での知識の集積にMPTPの発見もあいまって,この分野の研究のさらなる進展が期待される。本稿では,神経系内における振戦の発現機構につき,現時点でどこまで解明されているかについて概説を試みる。治療については,これとの関連で触れるにとどめる。振戦に対する定位脳手術治療の詳細に関しては,楢林30)の総説を参照されたい。
Tremor is an involuntary movement characterized by rhythmic oscillations of a part of body, and it is a most common symptom in the practice of neurology, easy to recognize and to measure. Studies of neural mechanism of tremor generation have been done by two approaches. One is of course, the clinical investgation, consisting of clinical neurophysiology, neuropathology, stereotaxic neurosurgery on tremor and clinical neuropharmacology. The other is the experimental study in monkeys to make a spontaneous sustained tremor. The two approaches have been developed hand in hand with each other.
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