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末梢性ニューロパチーの診断にあたって病理学的検索は重要な位置を占めるが,サンプリングの方法や標本作成,所見の解釈にいくつかの留意すべき点がある。ここでは,①作成すべき標本,②末梢神経の3つの主要構成要素(有髄線維,無髄線維,微小血管)の病理学的変化とその評価法,および③腓腹神経生検が診断の上で有用である疾患について概説する。また,腓腹神経生検はあくまでも第4,5腰髄および第1,2仙髄後根神経節に細胞体を持つ第一次感覚ニューロンと,交感神経節後ニューロンの末端に近い一部分をみているにすぎず,末梢神経病変の全容の把握には広範な標本の採取とその立体的な評価が必須である。末梢神経の病理学的変化には疾患特異的なものは比較的少ないが,1枚の標本は思いのほか多数の情報を持っている。神経学的所見,電気生理学的所見を含めた総合的な臨床検討の中にこそ,末梢神経系の病理学的検索の真の価値が存在すると言っても過言ではない。
はじめに
1960年代後半から末梢神経生検が,神経学的検査法のひとつとして一般的に取り入れられるようになり,これと並行して電子顕微鏡的検索,末梢神経ときほぐし法,有髄線維・無髄線維の定量的分析などが発展していった結果,各種末梢神経疾患の生検病理に関する情報は急速に蓄積されつつある。これに対し,剖検時に各神経幹の近位部から遠位端に至るまでの材料を採取することが煩雑であること,ルチーンのパラフィン切片では個々の有髄線維の形態変化を議論するには全く不十分であることなどから,剖検例における末梢神経の病理学的知見はいまだに極めて乏しいものがある。しかし腓腹神経生検は,あくまで第4,5腰髄および第1,2仙髄後根神経節に細胞体を持つ第一次感覚ニューロンと,交感神経節後ニューロンの末端に近い一部分を採取しているにすぎない。したがって,末梢神経系に散在する病巣の評価や運動神経系に限局する病変の観察にはほとんど無力といって過言ではなく,末梢神経病変の全容の把握には,広範なサンプリングと適切な標本作成が重要な要素となる。
本稿では,まず末梢神経系の検索のために作成すべき標本について概説し,つぎに末梢神経の病理学的変化について,末梢神経系の主要構成成分である有髄線維・無髄線維・微小血管の3者に焦点を当てて述べた後,腓腹神経生検が有用であるいくつかの疾患について述べることとする。
Pathologic examination of the peripheral nervous system provides indispensable informations in the diagnosis of peripheral neuropathy;however, we should be careful for the pitfalls in interpreting the pathologic changes as well as for the sampling of the materials. In this review article, I first deal with the specimens which must be made to reach proper diagnosis. Then I discuss the basic pathologic processes that may affect the peripheral nerves and basic findings observed in the three most important components of the peripheral nerve, namely, myelinated nerve fibers, unmyelinated nerve fibers, and endoneurial capillaries forming blood-nerve barrier.
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