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Case
成人GH(成長ホルモン)分泌不全症にNASHを合併した1例
症例:31歳、男性。
主訴:肝障害、脂質異常症。
既往歴:小児期に低身長をきっかけに「下垂体茎断裂症候群による汎下垂体機能低下症」と診断され、副腎皮質ホルモン・甲状腺ホルモンとともに、低身長に対するGH補充療法を受けていた。思春期からは性腺補充療法も追加されたが、18歳で成人身長に達したためGH補充療法は中止されていた。
生活歴:アルコール摂取歴;機会飲酒少量。
現病歴:20歳前後より軽度の肝障害と脂質異常症(時に1,000mg/dLを超える高中性脂肪血症)が次第に増悪し、精査のため31歳時に当科を紹介された。
初診時身体所見:身長165cm、体重60kg、BMI 22.0。頭頸部異常なし、胸部異常なし、肝脾腫大・圧痛なし、浮腫・皮疹なし。
一般検査所見:WBC 6,700/μL、RBC 458×104/μL、Hb 14.2g/dL、Plt 28×104/μL、T-Bil 0.8mg/dL、AST 88IU/L、ALT 85IU/L、γGTP 76IU/L、ChE 543IU/L。
空腹時血糖93mg/dL、空腹時インスリン15IU/mL、HbA1c 5.7%。LDL-C143mg/dL、HDL-C 31mg/dL、TG 712mg/dL。HBsAg(-)、HBcAb(-)、HBsAb(-)、HCVAb(-)。抗核抗体(-)、抗平滑筋抗体(-)、ミトコンドリア抗体(-)。
腹部超音波検査:肝腎コントラスト陽性。
腹部CT:肝実質CT値低下、内臓脂肪面積131.6cm2。
下垂体MRI:下垂体前葉の萎縮、下垂体茎の狭小化、異所性後葉。
内分泌学的検査所見:
[下垂体前葉ホルモン基礎値]
GH 0.2ng/mL、IGF-I 17ng/mL、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン) 3.5 pg/mL、コルチゾール0.8μg/dL、PRL(プロラクチン) 5.4 ng/mL、TSH(甲状腺ホルモン) 0.23IU/L、FT4(遊離サイロキシン)1.08ng/mL(レボチロキシンNa 125μg服用中)、LH (黄体形成ホルモン)0.8IU/L、FSH(卵胞刺激ホルモン) 1.3IU/L、テストステロン4.8ng/mL(hCG、遺伝子組み換えFSHにより治療中)
[下垂体前葉負荷試験]
インスリン低血糖試験:GH基礎値0.2ng/mL、頂値0.5ng/mL、ACTH基礎値2.6pg/mL、頂値3.4pg/mL、コルチゾール基礎値 0.3μg/dL、頂値 1.8μg/dL。
GHRP-2試験:GH基礎値0.3ng/mL、頂値 1.4ng/mL。
TRH試験:TSH基礎値0.03IU/L、頂値 0.87IU/L、PRL基礎値 6.3ng/mL、頂値12.9ng/mL。
LHRH試験:LH基礎値1.2IU/L、頂値1.8IU/L、FSH基礎値0.6IU/L、頂値1.4IU/L。
内服薬:ハイドロコーチゾン15mg分2、レボチロキシンNa 125μg分1。
自己注射:ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン5,000単位週2回、遺伝子組み換えFSH 150単位週2回。
肝生検所見:大脂肪滴が約40%に沈着している。門脈域には線維性拡大とリンパ球浸潤、実質内にも軽度の炎症反応、好中球浸潤を認める。Pericellular fibrosis、ballooningを認めた。病理学的に「非アルコール性脂肪肝炎」(non-alcoholic steatohepatitis : NASH G1)と診断。
▶肝生検にて「NASH」と診断され、成人GH分泌不全症によるものと考えられたため、GH補充療法を施行し、肝機能、組織所見ともに改善を認めた。
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