シネマ解題 映画は楽しい考える糧[97]
「7つの贈り物」
浅井 篤
1
1東北大学大学院医学系研究科社会医学講座医療倫理学分野
pp.701
発行日 2015年7月15日
Published Date 2015/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1429200296
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臓器移植を巡る物語
臓器移植を扱った映画は,今までたくさんつくられてきました.主たるテーマやカテゴリーはさまざまですが,いずれも強烈な印象を残します.本作を紹介する前に,私が知る範囲の作品をざっと解説します.マイケル・クライトン監督『コーマ』(1977年,米国)では,傲慢な有名医師が組織した殺人と臓器売買が描かれ,真実を追求する女性レジデントの命が狙われました.日本が最初の臓器移植法を成立させる30年も前の作品であることに注目しましょう.ペドロ・アルモドバル監督『オール・アバウト・マイ・マザー』(1999年,スペイン)では,息子が脳死ドナーとなった移植コーディネーターが主人公でした.息子を失った母の大きな悲しみが,ひしひしと伝わってきます.彼女はプロとして決して行ってはいけないことをします.
ボニー・ハント監督『この胸のときめき』(2000年,米国)では,妻を事故で失った男性と,妻の心臓を移植された女性との恋愛物語で,お互いの複雑な心境が細やかに描かれました.娘にドナーが見つかった時の家族や友人の喜びも印象に残ります.自分の家族の臓器がまったくの他人の中で息づいているのを見るのはどんな気分なのでしょうか? ニック・カサベティス監督『ジョンQ』(2002年,米国)では,臓器配分と医療制度の在り方,父の息子への愛が語られました.ジョンの最後の行動は見ものです.今回紹介の作品にも通じるものがありますね.
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