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もう十年以上前の話になるが,筆者が当時在籍していた癌研附属病院の胆囊癌の切除成績をまとめてみて驚いたことを思い出す.病理診断に基づいた深達度別予後,つまりm,mp癌,ss癌,se,si癌の生存曲線が驚くほどきれいに分かれて描かれるのだ.リンパ節転移も同様でn1,n2,n3以上で曲線が分かれる.問題は術前画像診断で深達度とリンパ節転移を正確に判定できないことであった.癌研ではシンスライスの造影CT,EUS,胆囊動脈の超選択的血管造影など,当時としては最先端の診断技術を駆使していたが,それでも深達度の正診率は平均すると53%程度で,リンパ節転移の正診率はさらに低く転移陽性例で診断できたのは四分の一以下であった.この成績は2003年に外科系の英文誌で報告した.最新の診断技術を紹介した本号の特集をお読みいただき,この問題が解決されようとしているのかどうか,読者諸兄にご判断をいただきたいと思う.
もう1つ言えることは胆囊癌ほど行われる術式の侵襲の大きさに差のある癌もめずらしいということである.m癌と確実に診断できるのであれば胆石と同じ単純胆摘で根治するはずであるし,ss癌程度では肝床切除というminor hepatectomyの付加で済まされることが多い.しかし,肝浸潤や胆管浸潤をきたせば拡大右肝切除+胆管切除というmajor hepatectomyが必要となるし,これに十二指腸浸潤が加われば肝膵同時切除(hepatopancreatoduodenectomy;HPD)という消化器外科領域で最も侵襲の大きい術式の1つを余儀なくされる.しかも進行胆囊癌は高齢者に多い.個々の症例で過不足のない術式の選択がいかに難しいか,本号の座談会で臨場感をもって熱く討論されているのでぜひお読みいただきたい.
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