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編集後記
國土 典宏
pp.132
発行日 2010年1月15日
Published Date 2010/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1428100237
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肝移植を他臓器移植と比べた場合の特異性は,「生体肝移植が可能である」ということと,「実用化された人工肝補助装置が存在しない」,ということであろう.そのため脳死移植の少ないわが国では生体肝移植が日常診療として定着した.一方,「人工肝」の研究は数十年間行われているにもかかわらず,肝機能ゼロの患者を月や年のオーダーで生命維持できる人工肝補助装置はまだ開発されていない.生体肝移植という選択肢があることは患者にとって福音であるが,実用化された人工肝補助装置が存在しない現状では,劇症肝炎などの肝不全で家族内に生体ドナーがいなければ「非常にチャンスの少ない」脳死肝移植以外では患者を救うことができない.
腎移植では生体肝移植も可能であるし,透析という人工腎補助装置によって十年以上の長期間患者は生存することができる.心移植は脳死移植しかあり得ないが,人工心補助装置の進歩がめざましく,最近では埋め込み型も登場して患者のQOLが上昇し,しかも5年生存も珍しくないという.ちなみに埋め込み型の「人工腎」はいまだに開発の見込みがたっていないようである.
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