書評
臨床と病理よりみた膵癌類似病変アトラス[CD-ROM付]
近藤 哲
1
1北海道大学大学院医学研究科腫瘍外科学
pp.519
発行日 2007年9月15日
Published Date 2007/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1427100620
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管腔臓器である胃や大腸の早期癌の実体はすでに明らかになり,管腔を通してアプローチするX線造影・内視鏡・生検の3本柱で診断法も確立され,治療成績の飛躍的な向上に直結している.実質臓器の癌の代表である肝細胞癌は,すでにハイリスク群が同定されているので検査を集中化・精密化することで1 cm前後の小腫瘤も検出できるようになり,早期癌の実体もほぼ解明された.
同じ実質臓器の癌でありながら膵癌はいまだに早期癌の実体をだれも知らない.癌の組織発生を考えると,肝細胞癌は実質細胞から発生するわけで膵では腺房細胞癌あるいは内分泌腫瘍に相当する.一般の膵癌は「膵管癌」であり,外分泌系導管上皮から発生するので肝では胆管細胞癌あるいは肝外胆管癌に相当する.膵管小分枝から発生すると想像されており,本来は管腔臓器の癌である.したがって,膵管小分枝へアプローチする管腔臓器本来の診断法を追求することをあきらめてはならないが,如何せん管腔はあまりに細くアプローチも侵襲的である.病変が分枝から主膵管へ伸びてきて主膵管が閉塞してくれたとしても,胆管癌での黄疸のような特異的症状は発現してこない.
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