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今回の症例報告のまとめを表1に示した.
■確定診断
腺房細胞腫瘍の確定診断は組織学的に腺房細胞への分化を証明することである.従来,その証明は電子顕微鏡観察による酵素原顆粒zymogen granulesの存在を明らかにすることであった.今日は免疫酵素組織学的方法を用い腫瘍細胞に正常の腺房細胞内に含まれる酵素蛋白の存在を確認することである.今回の報告ではα1―antitrypsin陽性細胞の証明が9症例中5例と最も多い.同一腫瘍内に種々の酵素蛋白が認められるものや単独の酵素蛋白のみからなるものなどいろいろな症例が見られるが,確認された酵素蛋白の種類により腫瘍の性状に大きな相異は認められていない.また,電顕的検索を行い酵素原顆粒zymogen granulesを証明している報告は1例ある.この腫瘍で,電顕的検索が必要な場合は組織像が腺房細胞腫瘍を強く疑うが,免疫組織学的検索で前述のいずれの酵素蛋白も陰性である場合である.このような場合は電顕的に酵素原顆粒zymogen granulesを証明する必要があるが,それ以外の電顕的検索はほとんど不要といえる.
診断の問題症例はAFP,内分泌顆粒,CEA,CA19―9が陽性である腫瘍細胞が混在している例である.このような別の形質を示す腫瘍細胞が含まれている症例をどのように組織診断するかである.いうまでもなく,この問題はこれらの陽性細胞が既存の腺管や内分泌細胞の腫瘍内に残存したものでないことを十分検討したうえである.今回の報告ではAFP陽性かつ一部に内分泌顆粒陽性1例,CEAかつCA19―9陽性1例みられた.現時点ではこのような腫瘍の症例が稀であることより優勢像で診断を行い,腺房細胞に分化を示す細胞のみから成るものと他の細胞に分化したものの混在から成ることがわかるように記載し組織診断しておく必要がある.今後,腺房細胞に分化する腫瘍の特徴をより正しく把握するためには,このような組織診断をもとに多くの腫瘍を集積し再検討する必要があると思われる.
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