特集 糖尿病診療の障壁(バリア)をのりこえる
Ⅲ薬物治療を効果的に行うために
ショートレクチャー
他科へのコンサルテーションを拒む患者への対応
山本 壽一
1
1社会医療法人かりゆし会 ハートライフクリニック
pp.623-626
発行日 2016年8月15日
Published Date 2016/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1415200481
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はじめに
糖尿病の治療において私が理想と思う筋書きは,患者さんが糖尿病をもちながらも,加齢による機能低下以上に生活の質を落とすことのないような,人生を送れるようにサポートすることである.
しかし,実際には難しいことである.糖尿病の3大合併症をはじめとして動脈硬化や固形癌など,糖尿病をもつことで発症頻度が増す疾患はたくさんある.これらの疾患を念頭に置きながら,日常診療を行っている.定期的にスクリーニングを必要とする眼科受診,腎症が進行してきた時の腎臓内科へのコンサルト,足病変に対する外科や整形外科へのコンサルトなど,他科との併診が必要となることはしばしばある.
本稿では,他科受診を勧めるが受診につながらない事例について検討したい.
本論に入る前に,明確にしておかなければならないことが2つある.1つは,私たちは患者さんに勧めることはできるが,させることはできない.慢性疾患の治療行動はあくまでも本人の課題である.2つ目は,治療者と患者さんの関係性で患者さんの気持ちや行動が変わる.この2つは矛盾することのように聞こえるが,どちらも事実である.
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