JIM臨床画像コレクション
疥癬
宮地 良樹
1
1群馬大学医学部皮膚科
pp.767
発行日 1996年9月15日
Published Date 1996/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414901918
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疥癬はヒゼンダニによる感染性皮膚疾患である.昭和50年代にはSTD (sexually transmitted disease,性感染症)として注目されたが,最近ではむしろ病院や保育園,寮などの集団生活内での発生が社会問題化しつつある.最初の患者を早期診断し,適切に治療すれば病棟閉鎖などの事態は未然に防げるので,正しい知識が求められる.疥癬の特徴は,夜間激痒があること,指間,外陰部,腋窩などに紅色丘疹がみられるが,顔面や頭部にはないこと,家族,同胞や同室者に同症がみられることである.夜間掻痒が強くなるのは,ダニの動きが活発になるためである.確定診断には,検鏡でダニを証明することが必要であるが,写真のような指間の丘疹(とくに疥癬トンネル),陰のうのコリコリとした結節などは,十分に本症を疑う根拠となる.介助患者の多い老人病院などでは,いったん疥癬が蔓延すると根治し難いので,入院時に十分な問診と診察により疥癬をチェックしておく必要がある.すでに疥癬患者が発生している場合には,病室や寝具類を別にするとともに,医療従事者が媒介とならないように,介助のたびに手洗いを励行しなくてはならない.最近ではSTDなどのような直接的接触による感染により,寝具や医療従事者を介した間接的接触による場合のほうが多い.
治療としては,10%クロタミトン軟膏やイオウ含有軟膏の全身外用,ムトウハップ浴などが一般的であるが,高齢者ではイオウ外用によるドライスキンに対するケアも必要となる.
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