特集 家庭医のためのワクチン・プラクティス
【知っておきたい任意接種ワクチン】
B型肝炎ワクチン
八橋 弘
1
1国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター
pp.664
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102595
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B型肝炎ワクチン(HBワクチン)投与対象者とは,今までB型肝炎ウイルス(HBV)に曝露されず,今後感染する可能性のある者である.具体的にはHBs抗原陰性,HBs抗体陰性,HBc抗体陰性者が対象となる.最もHBV感染のリスクの高いグループとは,HBVキャリアを配偶者とする者,HBVキャリアと同居する者である.第二のハイリスクグループとは,医師,看護師,検査技師などの医療従事者である.第三のハイリスクグループは,消防士,救命救急職員,警察官など,職業上,感染血液に曝露される可能性の高い職種,および長期に集団生活を行う施設入所者などである.
HBV感染予防は,受動免疫によるHB免疫グロブリン(HBIG)の投与と能動免疫によるHBワクチンの投与の2つからなる.HBIG,HBワクチンの使い分けは,期待しうる予防効果出現までの時間による.HBVの感染の機会を受けた場合は速やかにHBIGを投与し,HBVが肝臓に着床し増殖する前にHBIGに含まれるHBs抗体によってHBVを中和排除させる.HBIGは受動免疫法であるため,その効果は一過性であり,数カ月しか持続しない.一方,HBワクチンは,個体の免疫応答を刺激し,HBs抗体を産生させ能動免疫状態とし,HBウイルス感染を防御する方法である.HBワクチンにより得られたHBs抗体は,通常,3,4年間は陽性となる.仮にHBs抗体が陰性化してもワクチンによる能動免疫は,少なくとも10年から15年間,持続すると考えられている.
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