JIM Library 私の読んだ本
大滝純司(監修)川島篤志・菊川 誠・錦織 宏・増田浩三(編集)『考える身体診察―症状・主訴から組み立ててゆく身体診察のストラテジー』
金城 紀与史
1
1沖縄県立中部病院総合内科
pp.642
発行日 2011年8月15日
Published Date 2011/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414102255
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身体診察は習得が難しく,しかも所見があるのかないのかきちんとフィードバックを受ける機会が少ないために,自分の診察技術が正しいのかどうかも不確かなまま卒業,研修修了してしまうことも多い.「白黒」はっきりしてくれる客観的な血液や画像検査に依存しがちなサイクルに陥ってしまう.こうした批判から,OSCEをはじめとして医学部での診察技術の教育が充実してきたし,身体診察の教科書も多く出回り,有名な洋書も比較的早く日本語訳が出版されるようになった.
では本書の特色は何か.それは「考える診察」を強調している点である.心音の聞き方,神経所見の取り方など正しい診察技法を身につけても,それだけでは臨床現場では不十分である.目の前の患者の主訴,病歴から鑑別診断をあげる.鑑別診断は見逃してはいけない緊急疾患,頻度の高い疾患を軸に考える.頭の中にイメージした「診断」を身体診察によって探しに行く作業が必要なのである.問診でスクリーニングをし,身体診察で確定診断を付けるというイメージである.ところが従来の身体診察の教科書では正しい診察技法や,異常所見についての記載がされても,どういう患者でどういう所見を「見つけ出すべきか」という記載が少ない.本書では対照的に,最初に症例呈示がある.主訴から何を考えるべきかを検討し,診断を導くための診察のポイントを明示してくれる.主訴は「目が赤い」,「頭痛」,「腹痛」から「血圧が高い」,「肩・膝・足の痛み」など一般外来や救急外来でよく遭遇するものになっており,限られた時間内に効率よく鑑別診断をあげて焦点を絞った診察をして診断に結びつけるポイントが記されている.
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