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症例は46歳の女性.約半年前からの両側腋窩,両側腹部の皮下結節を主訴に当院皮膚科を受診した.皮膚生検が施行され,悪性所見が認められたため,総合診療科へ紹介となった.来院時,バイタルサインは安定し,身体所見上,表在リンパ節は触知せず,皮下結節は両側腋窩(表紙写真・左),両側腹部(表紙写真・右)に加え,項部にも認められた.さらに,右乳頭外側9時方向に可動性やや不良な腫瘤を触知し,マンモグラフィにてspiculationがあり,生検にて乳癌と診断された.皮下結節は,乳癌の皮膚転移と考えられた.
転移性皮膚癌は皮膚以外の癌が,血行性,リンパ行性,あるいは直接浸潤して生ずるとされる.その頻度は報告により異なるが,Lookingbillらによる7,316例の検討では,担癌患者において皮膚転移の頻度は5%(367例)で,0.8%(59例)では皮膚転移が原発巣に先立って認められたという1).本症例でも患者が自覚したのは原発巣ではなく,皮膚転移のほうであった.原発巣はあらゆる部位の可能性がありうるが,前述のLookingbillらの報告では,乳癌,肺癌,大腸癌,口腔癌などが多かったという1).転移性皮膚癌の臨床像としては,本症例でも認められ,最も頻度が高いといわれる結節,乳癌などにおいて皮膚が発赤する浸潤性紅斑(丹毒様癌),結合組織の増生により皮膚が硬くなる硬結性局面(乳癌における鎧状癌,頭部の腫瘍性脱毛など)が知られている2).その他,表皮向性癌といわれる腫瘍細胞の表皮内の癌浸潤で湿疹様の皮疹を呈するものは二次性paget病,消化管や婦人科領域の悪性腫瘍などの臍部皮膚転移はSister(Mary)Joseph's noduleともいわれる.
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