特集 悪心・嘔吐へのアプローチ
【症例から学ぶ悪心・嘔吐へのアプローチ】
増強する嘔気と嘔吐で受診した63歳男性
村上 不二夫
1
,
田村 周
1
,
村上 康昭
1
,
小野 沙也子
1
,
矢原 昇
1
,
今井 一彰
1
,
福本 陽平
1
1山口大学医学部附属病院総合診療部
キーワード:
甲状腺機能低下症
,
体重減少
,
精神活動低下
,
胃排出時間
Keyword:
甲状腺機能低下症
,
体重減少
,
精神活動低下
,
胃排出時間
pp.526-528
発行日 2003年6月1日
Published Date 2003/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414100635
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症例呈示
患 者:63歳,男性.
既往歴:30歳時メニエール病,以後ときどき治療を受けている.60歳時に網膜黄斑変性症,緑内障を指摘されたが,不定期に点眼薬を使用するだけで,通院はしていない.
家族歴:父;食道癌,母;大腸癌,兄;肝硬変.
現病歴:従業員が数十人の会社の経営者として,精力的に仕事をこなしてきた.2000年春から1年間は慈善団体の会長として忙しかった.その頃から嘔気,頭痛,脱力感を覚えることがときどきあった.2001年1月に愛犬が亡くなったためにしばらく寂しかった.この頃から食欲が低下してきた.
5月に近医を受診して,消化管運動機能改善剤,精神安定剤,睡眠薬が処方されて服用していた.しかし,効果があまりないために胃内視鏡検査,頭部X線CT検査が行われたが,異常はみられなかった.その後徐々に食欲低下が進行して,7月に入ってからおもゆしか食べられなくなった.
7月6日には嘔気がさらに強くなり,ほとんど食べられなくなってきた.同日,心療内科を受診して,depressionと診断されて,トレドミン(R),ドグマチール(R)が処方された(当科受診時,患者さんは心療内科には7月8日に受診したといわれた).7月8日の夕方から嘔吐するようになり,ついには水を飲んでも嘔吐するくらいになったので,以後はほとんど食事,水分を摂取できず,7月9日に当科を受診された.最近は体重減少が目立つようになってきており,1年前に比較して約10 kg減少していた.
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