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Case
患者:83歳,男性.
主訴:発熱,食欲不振,全身,倦怠感.
既往歴:特記事項なし.
現病歴:10月初めより,膀胱上皮内癌のため近医泌尿器科にてマイトマイシンC(MMC)の膀胱注入療法を受けていた.10月25日より全身,倦怠感,食欲不振を自覚し,11月6日に入院となった.40℃台の発熱,血液検査上WBC 13,000/μl,CRP 6+(定性)と上昇を認めたが,検尿,腹部エコー上は尿路感染を疑う所見はなかった.セフォジジムナトリウム,グロブリン製剤,ヒドロコルチゾンを投与されたが解熱せず,11月9日発熱の精査加療目的に当院に転院となった.
入院時現症:身長170 cm,体重65.5 kg,意識レベルJCSⅠ-1,血圧86/40 mmHg,脈拍74/分・不整,呼吸数25回/分,SpO2 100%(酸素3 l経鼻カニューラ),体温34.6℃,皮疹・紫斑なし,表在リンパ節(頸部・腋窩・鼠径)触知せず,眼瞼結膜貧血なし,鼻汁なし,咽頭発赤なし,扁桃腫大なし,頸部血管雑音なし,呼吸音異常なし,心雑音なし,腹部異常所見なし,CVA叩打痛なし,両大腿・膝窩・足背動脈触知良好,前立腺触診異常なし,神経学的異常所見なし.
検査所見:検尿;白血球(-),潜血(±),亜硝酸塩(-).血液検査;WBC 23,500/μl(Ne 94.5%,Ly 3.7%),RBC 3.93×106/μl,Hb 12.1 g/dl,Ht 34.9%,Plt 15.3×104/μl,PT活性4.9%,APTT活性55.4%,Fib 596.1 mg/dl,ATⅢ64.4%,FDP 261.1μg/ml,TP 5.3 g/dl,Alb 2.3 g/dl,AST 45 IU/l,ALT 14 IU/l,LDH 592 IU/l,ALP 648 IU/l,T-bil 0.6 mg/dl,D-bil 0.2 mg/dl,BUN 26.7 mg/dl,Cr 1.11 mg/dl,Na 133 mEq/l,K 2.8 mEq/l,Cl 94 mEq/l,Ca 8.1 mEq/l,CRP 15.70 mg/dl,RF 10 IU/ml,ANA 80倍未満,PR3-ANCA 10 EU未満,MPO-ANCA 10 EU未満,TSH 2.28μIU/ml,FT4 1.4 ng/dl,HTLV-1 2,048倍,CEA 1.3 ng/ml,CA19-9 409 U,PSA 2.0 ng/ml,可溶性IL2R 1,900 U/ml,血液培養(5回)陰性,喀痰抗酸菌培養陰性.ツベルクリン反応;11×10 mm弱陽性・硬結なし・二重発赤なし.尿細胞診;異型細胞集塊を認め大小不同性あり,N/C比大きくクロマチンに富み核の異型性あり,尿路上皮系腫瘍の所見,ClassⅤ.安静時心電図;HR 66/min,af rhythm.胸部・腹部X線検査;異常所見なし.腹部超音波検査;明らかな異常なし,腹水なし.
入院後の経過:細菌感染を考えメロペネム 0.5 g×4を開始.3日間使用したが,熱型の変化なく投与を中止した.胸腹部骨盤CTで腹部大動脈周囲に多発リンパ節腫脹を認め,結核性リンパ節炎の診断的治療目的で抗結核薬(エタンブトール,イソニアジド,リファンピシン)の投与を開始したが解熱傾向はなかった.また悪性リンパ腫を想定してプレドニゾロン(PSL)内服も開始した.一方,血液検査ではALPが上昇を続け3,600 IU/lとなった.ガリウムシンチグラフィ(Gaシンチ)にて胸腰椎移行部や胸骨,腸骨に不均一な集積がみられた(図1).また可溶性IL2R,CA19-9の上昇を認め,悪性リンパ腫や癌の骨髄浸潤と考えられる所見であった.本人の腰痛の訴えも出現し,脊椎MRIで椎体の黄色髄が消失し,癌・悪性リンパ腫の骨髄浸潤が疑われ,腸骨からの骨髄生検を施行した.クロマチンに富む異型細胞を多数認め,膀胱癌の骨髄浸潤と診断した.高齢であること,家族の希望,現在のADL,QOLを考慮すると積極的治療の適応はなく,ベタメタゾンにより発熱のコントロールが得られたので自宅退院となった.
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