交見室
腎の嚢胞性疾患の用語について,他
高橋 剛
1
1聖マリアンナ医大横浜市西部病院
pp.554-558
発行日 1990年6月20日
Published Date 1990/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413904649
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画像診断技術が長足の進歩をとげつつある今日,腎の嚢胞性疾患は日常頻繁に発見されるようになり,種々の報告例も増えているようです.そこで1989年度1年間の本誌を読み返して本疾患に関する報告を調べてみました.ところがそれが意外と少なく,わずかに12号に「腎嚢胞に合併した腎細胞癌の1例」があるのみでした.しかし今後必ず本疾患に関する論文が出るものと予想されますので,以前から気になっていた点について述べさせて頂きます.
嚢胞性腎疾患の分類についてはいまだに議論のあるところで,疾患名について様々な命名があるのも致し方ないものと思います.が一応の分類と日本語の用語はあり,個々の疾患について用語はともかく,臨床的特徴について共通した認識はあるものと思います.しかしこのうち嚢胞腎polycystic kidneyについてはかなり混乱した命名があるようです.注意してみていますと,泌尿器科領域ではこれについてほとんど間違った用い方をしていないようですが,他の分野(時に放射線科,内科)では理解に苦しむような命名があります.たとえば学術誌や学会発表から捨ったものをあげてみますと,多嚢胞腎,多発嚢胞腎症,多発性嚢胞腎などがあり,最後のものは内容を読んでみますとunilateral multicystic kid-neyについてのもので,嚢胞腎ではないことがわかり大変紛らわしいものでした.
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