小さな工夫
陰茎横の小切開による精巣摘除術
高井 計弘
1
,
松本 信也
1
1日本赤十字社医療センター泌尿器科
pp.1096-1097
発行日 1999年12月20日
Published Date 1999/12/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413902813
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前立腺癌に対する精巣摘除術は,通常陰嚢での切開が行われ,縫線上の単一切開で両精巣を摘除する方法が簡便である。しかし,陰嚢は皺襞が著明で,肉様膜と皮膚をそれぞれ丁寧に縫合しても不潔な皮脂が溜まり切開創が汚染され感染し,離開することがある。また,排尿困難,頻尿,尿失禁がある場合,尿道カテーテル挿入の刺激で術後に尿失禁が増悪し,陰茎,陰嚢が尿で汚染されることはよく経験する。埋没縫合も有用だが,今回,陰嚢皺襞での切開を避け尿の汚染を防ぐ術式を報告する。筆者らはこの術式で80例を超えたが,創の離開は1例もない。また,本術式は腰椎麻酔下に行うが,皮膚の局所麻酔と精索の浸潤麻酔でも行える。
陰茎根部の横で陰茎より約1cm離し,約3cmの横切開を置く(図1)。ここは陰嚢上部との境で,鼠径部の皮下脂肪もなくなり,精索だけを捕まえられる。皮膚をメスで切開し,皮下組織を電気メスで切離する。浅在筋膜を見たらこれも電気メスで切離する。皮切は小さくても,皮下組織を鑷子で把持し,十分に端まで切離しておくのがこつである。薄い線維膜になったら,この切開内に陰嚢底に向かって小筋鉤を2つ入れて展開する。
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