Coffee break
腎摘除術と自己血輸血
長谷川 道彦
pp.131
発行日 1995年3月30日
Published Date 1995/3/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413901457
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近年,同種血輸血を回避する手段として自己血輸血の導入が注目されている。しかし悪性腫瘍患者を対象としたその導入は未だ限られたものであり,その原因として,1)悪性腫瘍患者は術前に貧血の状態が多い,2)待機手術といえども可及的速やかに手術を行う必要があり貯血期間に制限がある,3)採血の際,悪性細胞混入の可能性がある等が考えられる。私どもは,腎癌患者は,1)貧血を呈する症例が約20%と少ない,2)その予後に宿主免疫能の関与を受け易い悪性腫瘍である,3)補助療法の主役はBRMである等により,根治的腎摘除を自己血輸血の良い適応と考え手術を予定した腎細胞癌患者32例に自己血輸血を施行した。なお,仮に採血の際に癌細胞が混入したとしても1週間以上冷蔵保存することによりその細胞の生存は不可能と考えた。EPOを使用せず「もどし採血法」により,症例の約80%で600ml以上術前貯血が,その貯血量で約90%の症例が自己血輸血のみの根治的腎摘除術が施行された。よって,自己血輸血を導入することで根治的腎摘除術を予定した全症例の50%以上で同種血輸血の回避が可能であることになる。
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