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泌尿器病理に携わる医師として,2016年は病理組織の世界的規範であるWHOおよび尿細胞診の国際標準であるParis Systemという2つの世界基準が同時に発刊された記念すべき年である.この2冊は現在の泌尿器病理の最先端をまとめ,標準化を試みた書物である.さまざまな領域において新しい概念が導入されており,今後の泌尿器腫瘍の診療および研究を行う泌尿器科医にとって,この2つの正確な理解は必須といえる.すでに欧米のガイドラインではこれらの概念を導入した形での改定が進んでいる.また,これらの知識を前提とした研究も続々と発表されている.しかしながら,本邦では泌尿器科医向けにまとめられた発表もしくは書籍がないのが現状で,すでに発表および今後発表されていく欧米のガイドラインや研究の背景が十分理解できない懸念がある.さらに,医学研究を進めるうえで,2冊の本の概要を知らないことは著しい不利益である.したがって,多くの日本人泌尿器科医向けにこれらの情報をもたらすことが急務であると考える.
本特集では,日本の泌尿器病理の第一人者をお招きして,上記2冊で提唱された項目および初めて導入された概念についての解説,臨床的意義,使用方法,今後の方向性を平易に述べていただいた.それに加え,最近提唱された新しい概念も解説のうえ,今後の展望も述べていただいた.今回の内容は現在の世界の泌尿器病理の最先端を示すとともに,世界で行われている実情の理解にかなり役立つと自負している.また,同じ施設内の病理医にも情報を共有していただけると,より一層充実した成果が上げられると期待している.本特集が日本の泌尿器科医の日常診療および研究の大きな助けとなれば幸いである.
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