交見室
睾丸腫瘍の治療について/閉塞性無精子症に対する人工精液瘤造設術
河合 恒雄
1
,
岩崎 晧
2
1癌研付属病院泌尿器科
2藤沢市民病院泌尿器科
pp.358-359
発行日 1984年4月20日
Published Date 1984/4/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413203799
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臨泌38巻2号に2編の睾丸腫瘍に関する症例報告が掲載されている。2編共示唆に富んでおり,興味深く拝読させていただいた。この2編を通じて日頃睾丸腫瘍について考えていることをおりまぜて,小生なりの意見を追加させて頂きたい。
最初に,「化学療法が奏効した巨大セミノーマの1例」であるが,この報告を読んでまず感じたことは集学的治療が発達している現在,適切な治療を行い救命し得たからよかつたもののよくもまあここまで放置しておいたと感心する。このような患者こそ病気に対する認識がないからいつ来なくなつてしまうとも限らず,まつたくの蛇足であるが,厳重にfollowupされることを切に願う次第である。この症例では定型的セミノーマであつたから長い間血行性転移を起こさずここまで放置されたのであるが,いくら化学療法が進んだ今日でも進行例に対する治療には限界があり,治療期間が長びき治療費も嵩む。治療成績向上のため,他の癌と同様睾丸腫瘍においても早期発見,早期治療の原則は大切なことである。原則遂行の手段として,集団検診法の確立や自己検診法,一般の啓蒙などいろいろなことを考えなくてはいけない時期に来ているのではなかろうか。
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