交見室
再生を利用した膀胱拡大術(臨泌30巻4号,田口裕功)を読んで,他
田崎 寛
1
1慶応大学泌尿器科
pp.446
発行日 1976年5月20日
Published Date 1976/5/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1413202165
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すでに3年前のAmerican Urological Association(AUA)の総会で,ある若い泌尿器科医から「日本で紙を使つて膀胱拡張術を行なう手術が開発されたと聞いているが,実際にどのようなテクニックを使い,どのような成績であるか」と休憩時間にロビーで尋ねられたことがある。田口氏はその頃膀胱拡張術を始めて間もなかつたと思うが,私はその時まずこのように早く諸外国に日本国内の仕事も伝わるようになつたかと感心し,手術については私の知る範囲のことを質問者に伝えておいた。その後田口博士の論文はごく最近の日本泌尿器科学会誌67巻4号のも含めて通読させていただいているが,腸管利用の方法に対する方法,あるいはcontinenceを保たせる方法のひとつとしてこの和紙とノベクタンを利用した方法に徹しておられ,立派な成績をあげられていることに感服する。しかし私が素朴に疑問として感じるのは,再生という言葉の意味である。再生とは欠如した組織の部分に機能と形態を伴つたものが再びできあがると理解したい。その点で再生能力については「少しでも正常に近い組織の存在が必要」と述べられているが,本来病変のある組織であるからそこに感染や年齢などの要素が複雑に加わつているものと思う。
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