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本書は「医師のプロフェッショナリズムを考える」として,医師という職業(プロフェッション)のあり方を問いかけながら,プロフェッショナリズムは日常診療の中にあることを気づかせる。なぜ自分は医師を続けているのかを自らの問いに答える形で,「医師というプロフェッション」とはなにかを明らかにする。それは実証的ともいえる探求に基づいた実に印象深い実践の書となっている。編者の一人尾藤氏は「教条的なことを書いた本ではない」「国民は,立派な教条ではなく,医療専門職の意識と行動の変化を求めているのだ」という。
本書を手にしたとき,正直言って『白衣のポケットの中』という表題に,“それって何なの?”と思ったのも事実である。かつて医学概論の論者であり医学教育者でもあった中川米造さんとの白衣論議で,必ずしも白衣に対しては良い思い出がないからでもある。その中川さんは,「古典的にはプロフェッションとよばれる職業は,医師と法律家と聖職者の3つだけであったが,いずれも中身がわからない職業であるうえに,質の悪いサービスを受けると重大な結果を招くおそれのあるものである」といっている。とかくプロフェッショナリズムという言葉からはヒポクラテスにまでさかのぼる医療倫理という堅苦しさをイメージさせたからでもある。だが,そのような読み物となっていないところに本書の特徴がある。読者をして,日常診療の場で身近に起こり得る現実の問題に直面させながら問題解決をしていくプロセスの中で,プロフェッショナリズムを考えさせていくという巧みな執筆手法(むしろ編集といったほうが良いのかもしれない)がとられている。決して難しくもなく,そんなにやさしくもなくプロフェッショナリズムが論じられている。
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