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連載 皮膚科学に貢献した医学者たち・18
急性限局性皮膚浮腫あるいはクインケ浮腫
Oedema cutis circumscriptum acutum s. Quincke-Ödem
高橋 吉定
pp.855-861
発行日 1974年12月1日
Published Date 1974/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412201374
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1.はじめに
昭和の初め頃,旧日本海軍は揚子江に艦艇を常駐させていた.そしてその軍医は,揚子江沿岸に在任する一般日本人の診療をしばしば依頼されていた.その軍医の中にはわたしの先輩や同僚に当たる東大皮膚科医局の出身者も少なくなかつたので,おりおり医局で出会うこともあり,中国で見られる特殊な疾患の話などを聞いたものである.そのようなとき,強く印象づけられたのは,揚子江沿岸に住む日本人の間には,主として顔面に突然限局性の浮腫を生ずるものの少なくないという話であつた.そしてこれは"長江浮腫"と一般にいわれているが,軍医の間ではクインケの浮腫だろうと考えている人が多いということであつた.
昭和12年に起こつた日中事変は,中シナにまで拡大し,日本陸軍は揚子江を遡行して進軍した.当時召集されて陸軍軍医として内地の陸軍病院に勤務していたわたしは,中シナからこの陸軍病院に戻つた兵士には,前記の長江浮腫を発生するものの少なくないのを知つた.
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