マイオピニオン
脱色素斑が教えてくれた常識の罠
青山 裕美
1
Yumi AOYAMA
1
1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学
pp.482-483
発行日 2014年6月1日
Published Date 2014/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412104060
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2013年夏,美白化粧品を使用した相当数の消費者に白斑が生じたという事例が報道された.私たちがこの事例に出くわしたのは,幸運とも不幸とも言える.あの頃からもうすぐ1年が経とうとしている.一連の出来事を振り返ることができるようになった今,自分の意見を書き残してみようと思う.
岡山大学皮膚科がロドデノール白斑の存在に気づいたのは,当時,姫路赤十字病院皮膚科に勤務中であった塩見真理子医師が2013年1月19日,第254回日本皮膚科学会岡山地方会に「美白化粧水で尋常性白斑様の色素脱失を来したと思われる2例」(図)1)を発表されたのがきっかけである.その発表はロドデノールというメラニン産生阻害剤を含む化粧品を使用した2人の患者さんに化粧品による白斑が生じた,という内容であった.その発表を聞き終えた後に,「直接的な因果関係が証明しきれていないので,このまま認めてしまうのはまずいのでは」と感じたが,しかし否定する理由もない.すっと川崎医科大学皮膚科 藤本亘教授が手を上げて,「非常に貴重な症例であると思うが,このような結論を出すためには症例の蓄積が必要なのではないか?」とおっしゃった.私は「有効成分の特異的な効果で白斑になっていることを証明する必要があり,薬剤によるメラニン新生阻害を形態的に証明できる方法を模索してはどうか?」とコメントをした.まだ,このときには確信は持てないままであったが,その白斑の人工的な配列から塗布した化粧品との関係はありそうだと思った.しかし,確実な証拠がない.
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